マネジメントリーダーリレーインタビュー

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マネジメントリーダーリレーインタビュー

社会医療法人春回会長崎北病院 山田 麻和さん

2020.12.28 投稿

 長崎県にある社会医療法人春回会長崎北病院の山田麻和さん(作業療法士)にインタビューいたしました。
 とても勉強家の山田さん。現在は、総合リハビリテーション部士長を務めながら、大学院博士課程で研究も進めていらっしゃいます。
 現場のマネジメントと研究の両立を頑張っている山田さんに伺いました。

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◎山田さんの所属の病院はこちら
 社会医療法人春回会長崎北病院 http://www.shunkaikai.jp/kita/

◎山田さんのプロフィール
<現職>
  社会医療法人春回会 長崎北病院 総合リハビリテーション部士長

<ご略歴>
 2001年 長崎大学医療技術短期大学部作業療法学科卒業
     長崎北病院入職
 2009年 同病院 総合リハビリテーション部主任
 2014年 現職
 2018年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻修士課程卒業       
     長崎大学医歯薬学総合研究科医療科学専攻博士課程入学(在籍中)

<資格・その他>
 2008年 福祉用具プランナー
 2013年 シーティング・コンサルタント
 2014年 回復期リハビリテーション病棟協会セラピストマネジャー
 2014年 認定作業療法士
 2014年 長崎シーティング研究会発足(代表)
 2016年より 長崎大学 非常勤講師

◎現在の所属、役割やお立場をお教えいただけますか。これまでの経歴もお願いいたします。

 社会医療法人春回会長崎北病院のリハビリテーション科の士長をしています。春回会は急性期や回復期、緩和病棟や訪問リハ、通所リハ、そして特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどを運営し、地域包括ケアシステムに向けた医療・介護連携の推進を志しています。その中で長崎北病院は、脳神経内科およびリハビリテーションの分野における、高度の診療技術をもった病院を目指しています。リハビリテーション部には法人全体で200名程度在籍しており、その内140名ほどが長崎北病院で働いています。

◎所属の病院(法人)のご紹介をお願いいたします。

 長崎北病院は200床あるのですが、内訳は、回復期が80床、一般病棟が80床、療養型病棟が40床のケアミックス型病院です。私は昨年度、回復期病棟から一般病棟へ異動しました。一般病棟には、パーキンソン病やALSの方など神経難病疾患の方が多くいらっしゃるので、回復期病棟では出会えない疾患や課題に向き合っています。
 春回会の特色として、長崎北病院で就職しても、訪問リハや系列施設へ出向するなど、様々な分野をローテーションし、携われる機会があることが特色の一つとなっています。

◎リハビリテーション科のご紹介をお願いいたします。

 2001年に回復期病棟を立ち上げており、今年20年目になります。私も就職してちょうど20年目になりますが、就職した当時はリハビリテーションの職員は新人を入れて40名弱しかいませんでした。そう考えると、20年の間に3倍以上の人数になっていますので、若手の教育や離職率をどう減らすかといった悩みが出てくるようになりました。
 また、10年ほど前までメンタルヘルスの問題はほとんどありませんでしたが、今はすごくありますよね。時代の変化をものすごく感じています。自分たちが新人の頃にメンタルヘルスに関連した教育を受けた記憶はありませんが、これまで習ってきていないことにも対応していかなくてはならないという大変さはすごく感じています。

 

◎作業療法士になられた動機、きっかけを教えてください。

 高校3年の時に進路を決めないといけない状況の中で相当悩んでいました。家庭の事情で県外の学校は受けられないということもあり、県内の国立を探すことにしました。就職先の問題で経済学部を受けるかどうか迷っていたところ、ずっと育ててもらっていた祖母が足を骨折してしまいました。家事などを手伝ってはいましたが、身体的な部分をサポートできたとしても「また骨折するかもしれない」「迷惑かけちゃったな」という心のサポートは難しいのだと感じ、ちょうどその時期に、医療技術短期大学部が長崎大学にあるということを知り、OTが精神的な勉強も学べるとパンフレットで見たことがきっかけで、受験することにしました。
 就職してからも、日常生活動作ができなくなった方のお手伝いをして、出来るようになるようサポートしていますが、ただ出来ればよいというものではないですよね。そうではなく、その方が障がいを負ってからもよい気持ちで生活できるか、ちゃんと毎日を楽しめるかという視点で見た時に、体が治ればよいわけではないという思いがあるので難しさは感じています。やはり、本人の気持ちは大事なので。ただ、障がいを理由に人生を楽しめないことは絶対にないと思っているので、少しでも楽しく、元気に障がいと共に生きることを応援したいと思っています。

学会で発表されている山田さん

◎リーダーになった当時、壁にぶつかったこと、それをどのように克服したのかをお教えください。

 セラマネ(※1)は2014年に取得しました。当院はもともと、年間1、2人は受けさせるという方針だったので順番のような形で参加しました。
 それまで、リーダー研修は受けたことがなかったのですが、受けてよかったです。先輩が先に何人か受けているのですが、正直全てが肯定的な意見ばかりではありませんでした。でも、自分が実際に体験してみないとわからないので、次に行きたいですと手を挙げました。結果、受けてみてとてもよかったです。内容もですが、講師の先生や受講したメンバーとの出会いがとても刺激を与えてくれました。

 一番壁にぶつかったのは、2016~7年ぐらいでした。士長になって2年目くらいです。
士長になる時のタイミングで回復期から一般病棟へ移り、一年経たずに回復期へ戻ったという経緯があります。ずっと回復期で働いていて違うところへ行ったので、馴染んでいないところもあったとは思うのですが、おそらくその後に色々な問題が発生して解決できない時期がとても悩んでいた頃だと思います。
 後輩の研究を手伝った時に、学会発表にて他者からアドバイスというよりは、強い指摘をされたことがありました。私は研究を指導する立場なのに、ルールや方法を十分に理解していなかったことで後輩に辛い思いをさせてしまったと痛感し、勉強しないといけないという思いが、大学院の修士過程へ進むきっかけとなりました。
 また、メンタルを崩す人が出てきた時に上手く対応できなかったことも大きな壁となりました。対処法を習っていないからではなく、相手の気持ちに心から共感できず、同じ気持ちで寄り添えていなかったのだと思います。こちらの対応でもっとよい方向へ進めた可能性もあるのだと気付き、サポートの仕方や対応をどうしたらよいのだろうとすごく考えるようになりました。自分自身が相手を受け止める技量が足りないのだと思い、対応が上手な周囲の人を観察し、勉強するようになりました。幸いにも周囲に対応力が長けた人が多く、助けられています。

※1「セラマネ」
 一般社団法人回復期リハビリテーション病棟協会が開催している認定コースで、「回復期セラピストマネジャー」の通称。http://www.rehabili.jp/index.html

◎そのときのご経験と比べると、今はどのようなリーダーに変化したと思われますか。

 その当時をゼロだとすると、(100点満点だとしたら)40~50ぐらいは進んでいたいですね。
 もっと上を目指す必要があるとは思いますが、小さなことからコツコツ出来るようにならなければ、大きなことは出来ないと思っています。皆さんから見ると当たり前のことであっても、私には出来ないことがあるので、時間をかけて経験を積んでいるところです。
 対応の1つとして、その当時から毎年、野球選手の大谷翔平さんも取り組んでいたという「マンダラノート」をつけ自分の目標を立てるようにしています。このノートは目標を9個あげ、それぞれの目標をかなえるために出来るべきことを8個のマスに入れるのですが(計81マス)、一番落ち込んでいた頃は全て埋めるのに1か月ほどかかりました。出来ていない自分と向き合うことが辛くて埋められなかったですね。
 こうなりたいと思うことは、出来ていない自分を受け入れることでもあります。それがとても辛かったことを覚えていますが、自分の弱さ・未熟さを受け入れることが出来たからこそ、少しずつではありますが人との関わり方や対応の幅が広がってきているかなと思います。

◎リーダーとして、これだけは身につけておいたほうがよい、経験しておいた方がよいと思うことをお教えください。

 経験しておいた方がよいと思うことは、チャレンジすることですね。チャレンジをして難しいことを乗り越えていくという作業をしておくとよいと思います。できれば、それを一人ではなくチームでして欲しいですね。
 研究活動もそうですが、チームとして仲間を作って何かを成し遂げることを一つでもやって頑張った経験がその人の土台づくりにもなりますし、チームで取り組むことで他者との関係性を築くことにもなるので大事だと思っています。
 「変えたい」と思うことを無理でもいいからやっておく、結果として失敗しても、なぜ無理だったのか学べることも勉強になるので、やってみようという気持ちを大事にして欲しいですね。

◎山田さんがリーダーとして活動するとき、軸としていること、大事にしていることがあれば教えてください。

 “職場への愛”ですね。やはり、自分が今働いていてお給料をもらっている職場のことをきちんと考えることは大事だと持っています。頑張っているとどうしても、個人や自分を軸にして話してしまうことが多くなりますが、こうやって自分たちが働いて成長してこられたのは、病院のおかげですし、その病院がもっとよい病院となるために今、私たちが何を出来るのか常に考えていきたいと思っています。
 また病院で後輩を育てることが育ててもらったことの恩返しになると思うので、つながりを大事にしてもらいたいですね。

◎今後、リーダーとして勉強したいことはありますか。

 言葉にすると難しいのですが、コーチングとティーチングですね。ここ2年ほど、自分のテーマを「育成」にしているのですが、その重要性を考えた時に、育成を上手くすすめるためには教え方や伝え方が大切だと感じており、もっと勉強したいと考えています。相手が喜ぶ対応を出来る方がお互いによいと思いますし、長い目でみて成長に繋がる関わり方を出来るようになりたいと思っています。まだまだ、言葉や表現のボキャブラリーが足りず上手な対応が出来ないので、少しずつ焦らずに学んでいっているところです。

◎最後に、自分を元気にしたいとき、どんなことをしていますか。

 コロナの前は仲のよい人と飲んで喋っていました。落ち込んでいることを話さなくてもよくて、そういう場で気分転換を図っていたのですが、今はそれが難しいですよね。

 また、年齢を重ねてきて、睡眠など基本的な生活を丁寧にすることで元気になると感じるようになりました。すごくきつい時には長く寝るなど、あまり外に出て労力を注ぐのではなく、自分自身の体力や気力を復活させるために自分と向き合う時間を過ごすことをしています。
 私はすごく落ち込むと関連した夢を見ることが多く、寝ていても疲れが取れないのですが、それでも考えている方がよいと思っています。行動目標を立てられると気持ちが明るくなりますし、反省するだけではなく、次に同じことを繰り返さないために私はどうしたらよいのだろうと次の方向性が思い浮かぶと元気になるように感じています。それがきつい時もありますが、何かをして気を紛らわすよりは向き合う時間を作って次に進める道を探す方が、最終的には早く元気になれると感じています。

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【インタビュー後記】
 オンラインでのインタビューでも、山田さんの“マネジメント熱”がたくさん伝わってきました。現場で懸命に取り組まれている証拠だと思いました。
 パワフルさの一方で、健康に気遣いご自身を大切にしていることは、リーダーとして見習うことが多いのではないでしょうか。
 山田さん、この度はありがとうございました!